2016年11月3日木曜日

この世界の運動はなぜこんなにゆっくりしているのか?

Motion Mountainの著者はこんな疑問を発している。

運動はなぜこんなにゆっくりしているのか?ゆっくりというのは光速に比べて小さい速度で運動しているという意味である。確かに、宇宙の巨視的な物体の運動は非相対論的に説明できる。

この答えとしてあげているのは宇宙ができて上がってから長い時間が経過しているからだという。

(1) 宇宙ができたころ高速で動いていた粒子も衝突を繰り返し、他の物質に変化してしまったことによる。
(2) もう一つは高速電荷粒子の輻射減衰によるもの。

2016年9月28日水曜日

相対論因子の変わった求め方

Motion Mountainでは相対論因子を以下のように求めている。

実験から相対論的運動量保存則と相対論的質量エネルギー保存則が満足されているという所から始める。

相対論的運動量保存則:\[ \sum_{i} \gamma_{i}m_{i} \boldsymbol{v}_{i} ={\rm const} \]
相対論的質量エネルギー保存則:\[\sum_{i} \gamma_{i}m_{i} ={\rm const} \]

さて、次のような質量が等しい2個の粒子の非弾性衝突を考える。


観測者Aの場合、運動量保存則は $\gamma_{v} m v = \gamma_{V} M V$ と質量エネルギー保存則は$\gamma_{v} m + m = \gamma_{V} M $ となる。また、系Aの速度$v$は系Bの2個の粒子の速度$v$と速度$V$の合成で得られるので、相対論的速度の合成式を用いて、
\[v = \frac{ 2 V}{ 1 + V^{2}/c^{2} }\]
となる。この上の2つの保存則の式から$\gamma_{V} M$を消去すると  $\gamma_{v} v = (\gamma_{v}+1) V$となり, この式と速度の合成式の $V$ を消去すると、相対論因子の具体的な形が得られる;
\[\gamma_{v}  = \frac{1}{\sqrt{1-v^{2}/c^{2}}}\]

2016年9月23日金曜日

光速より速いもの

昨日、本屋さんで雑誌「ニュートン」を見ていたら, 今月号の特集は「超光速は実現可能か」だった。

Motion Mountainにはいくつかの例が記載されている。波の位相速度が真空中の光速度を超える可能性はある。ほかにも、あるのだろうか。もちろん、真空中の光速の話である。

影の速度は光速はこえてもよい。Motion Mountainにはいくつも例が紹介されているので考えてみるとおもしろい。はさみで紙を高速で切るときの切断点の移動、LPレコード(過去の遺物かもしれないが)を高速で袋に入れる時のレコードのエッジ部と袋の上端の交点の横方向への速度、床に寝ている状態から高速で立ち上がったときの地平線が遠ざかる速度、月に送られるレーザー光を高速で横に動かしたときの月面上でのレーザースポットの速度。

もうひとつはみかけの速度が光速を越える可能性があるという話が書かれており、それがクェーサーからのジェットが光速を超えて見える場合があること、また、タキオンを観測できるかどうかという話に展開されてる。

ともかく、Motion Mountainでは「energy speedは光速cを超えることはできない」言う表現になっている。

2016年8月29日月曜日

ロケットで宇宙の果てまで行けるか

光が時間$t$の間で移動できる距離は最大$ct$です. それでは、ロケットに乗って光に近いような高速で移動するとどこまで行けるでしょうか? $ct$ より遠くへはいけないのでしょうか?

もし, あなたがロケットの操縦士なら安心してください. もっと, 遠くまで行けます。加減速を無視し, ロケットが速度$v$で等速で移動しているなら, あなたのの時計$t$の間に移動できる距離$d$は、\[d=\frac{vt}{\sqrt{1-v^2/c^2}}\]となります.

$v>0.72c$より大きくなると $ct$ より遠くまでいけます。従って,  $v$が光速にもっと近いと, 1秒で宇宙の果てまで行って, 宇宙の果てが見れるかも.

2016年8月19日金曜日

固有時間とは

相対論では固有時間がよく使われますが、固有時間とはなんでしょう. Motion Mountainではこう書かれています. "固有時間を $c$ 倍したものが時空間隔 $di$ である". 固有時間を$\tau $ とすると, 時空間隔$di$は
\[di^2 = c^2\tau ^2 =  c^2t'^2-x'^2-y'^2-z'^2  \]となります. つまり, 物体が動いていた時, つねに, $x'=y'=z'=0$ の系で測定した時間 $t' (=\tau)$, すなわち, 物体とともに運動する観測者の腕時計のより測定される時間です.

2016年8月17日水曜日

特殊相対論の時空

ガリレイ力学では、絶対時間、絶対空間が存在その中を物体が運動します.

物体が, この空間内で設定されたある慣性系で $(t,x)$から$(t+dt, x+dx)$まで動くとき, 別の慣性系から見ると,  $(t,x')$から$(t+dt, x'+dx')$となり, 時間に関してはどの慣性系でも共通になります.

特殊相対論では時間と空間それぞれは絶対ではなく, それらを合わせた時空が絶対的存在でその入れ物の中を物体が運動することになります. ある慣性系で事象$(t,x)$から事象$(t+dt, x+dx)$まで運動したとします. もちろん, この事象点は無限に多くの等速運動する慣性系では変化しませんが, 座標の値は変化します. つまり, 別の慣性系でみると事象$(t',x')$から事象$(t'+dt', x'+dx')$まで運動します. この時, 時間の座標値も異なっているのがガリレイ力学との大きな違いです. 特殊相対論の場合, 時空間隔$di$は
\[di^2 = c^2t^2-x^2-y^2-z^2 =  c^2t'^2-x'^2-y'^2-z'^2  \]
で表され, どの慣性系でもこの時空間隔$di$が一定になるように時間と空間が混じり合います. つまり, 特殊相対論では異なった速度で運動する慣性系では時間と空間の混じり方が違っています. これらの系の間での混じり具合の変換式がローレンツ変換式で, この時空間隔$di$を一定にします. この特殊相対論の時空をミンコフスキー空間とよびます.

重要なのはこの間隔を持つ空間は, どの慣性系においても光速$c$が一定になるように作られていることです.


2016年8月7日日曜日

特殊相対論の出発点とその意味すること

どの教科書にも書いてあることだが、特殊相対論の出発点と主要な意味することをまとめておきます。

出発点は

  1. 光速不変性:物理系の速度$v$は上限があり、その上限値は光速$c$で、しかも、$c$はすべての観測者は不変である。
  2. ガリレオの相対性原理:すべての慣性観測者は等価である。
特殊相対論が含む内容

  1. 閉じた自由に浮遊する(慣性)部屋で、自分の部屋の速度を測定する方法はない。
  2. 絶対静止の概念は存在しない。静止は観測者に依存する相対的概念である。
  3. 長さや空間は観測者に依存する。長さや空間は絶対的ではなく相対的である。
  4. 時間は観測者に依存する。時間は絶対的ではなく相対的である。
  5. 質量とエネルギーは等価である。

2016年7月29日金曜日

k-計算法を用いた速度の合成式の導出

地球に対し速度\( v_{te} \)で走っている列車の中で、乗客が進行方向に列車に対
して速度\( v_{st} \)で石を投げるとする。ガリレイ力学では、地球に対する石の速度は\( v_{se} =v_{st} + v_{te} \)となる。ところが、特殊相対論では\[ v_{se} =\frac{v_{st} + v_{te} }{1+v_{st}v_{te}/c^2 } \]となる。

さて、この式をk-計算法で求めてみよう。

第1の観測者が時間$T$後に光パルスを第2の観測者に向けて光を送る。そして、第2の観測者の第1の第2の観測者は光を受け取るとすぐに第3の観測者に向けて光をおくるとする。

この時、第1の観測者に対する第2の観測者の相対速度は\( v_{te} \)で、第2の観測者に対する第3の観測者の相対速度は\( v_{st} \)より、第3の観測者が光パルスを受け取る時間は\[k_{st}k_{te}T=\sqrt{\frac{c+v_{st}}{c-v_{st}}}\sqrt{\frac{c+v_{te}}{c-v_{te}}}T\]となる。

一方、第1の観測者に対する第3の相対速度は\(v_{se}\)なので第3の観測者が光パルスを受け取る時間は\[k_{se}T=\sqrt{\frac{c+v_{se}}{c-v_{se}}}T\]
となる。

第3の観測者の光パルスを受け取る時間は一致しなければならない:\(k_{st}k_{te}T=k_{se}T\)。従って\[\sqrt{\frac{c+v_{se}}{c-v_{se}}}=\sqrt{\frac{c+v_{st}}{c-v_{st}}}\sqrt{\frac{c+v_{te}}{c-v_{te}}}\]を計算すれば、相対論的な速度の合成式が得られる。

この計算は中学生でもできる。簡単だと思いませんか。

2016年7月27日水曜日

早撃ちラッキールークって?

Motion Mountainでは「ラッキールークの芸当は可能か?」が導入になっているパラグラフがある。

ラッキールークって一体何なのか?プレステのゲームとかにもあるようだが、ラッキールークはヨーロッパ発のアニメで、自分の影を銃で撃って倒してしまうほど早撃ちなのだそうだ。これが可能なためには銃弾は光より速く動く必要がある。「ラッキールークの芸当は可能か?」の答えはすぐにわかる。質量のあるものは光速には到達できない。エネルギーをどんどんつぎ込むと無限に光速に近づけられるが、光速にはできない。

光速で動けるのは質量がゼロの光、それと可能性があるのは重力子ぐらいかな。

2016年7月24日日曜日

ドップラー効果とk-計算法

前にk計算法というのを紹介しました。静止系で時間間隔Tで光信号を一定速度で移動する第二の系に送った時,  第二の系ではkTの間隔で光信号を受けるとした。この間隔を光の波長と考えると、これはドップラー効果をあらわしているに異ならない。つまり、k因子は光の波長に対するドップラー効果そのものである。 \[ \lambda _{observer}=k\lambda _{source}=\sqrt{\frac{1+v/c}{1-v/c}}\lambda _{source} \] ここで\( 0<v<c \)の時は、光源が遠ざかる場合で赤方偏移、\( 0>v>-c \)の時は光源が近づく場合で、青方偏移に対応している.

2016年7月18日月曜日

光のドップラー効果の利用

近づいてくる光源の色は青い方に偏移し(波長が短くなる),  遠ざかる光源の色は赤い方に変位する(波長が長くなる). 光のドップラー効果である.

これを応用したものはたくさんある. 自動ドアのセンサ, 警察がスピード違反の取り締まりに使うレーダー.

太陽の自転についてもわかる. 太陽の一方の縁は青方偏移し, もう一方は赤方偏移しており, その周期は27日から33日で、緯度に依存する。また, 太陽の表面は5分程度の周期で振動している. また, 銀河系の中の太陽系も銀河系の中心のまわりを回転してることがわかる.

2016年7月17日日曜日

時間の進み方の遅れ -k計算法-

特殊相対論の教科書で、相対運動する2人の慣性観測者の時間の遅れの式を導くとき、2枚の鏡を往復する光の時間でよく説明される。Motion Mountainではk因子を使ったk計算法で説明されている。

相対速度\(v\)で運動する二人の慣性観測者がいる。二人の観測者は時刻0で出会い、それから第1の観測者の時計で時間\(T\)後に第1の観測者が第2の観測者に向かってフラッシュ光を送り、第2の観測者は光を受け取ると第1の観測者にすぐ送り返すとする。第2の観測者が光を反射したのは第2の観測者の時計で二人の観測者が出会ってから\(kT\)後であったとする。 

さてここからがみそである。両者にとって光の速度が不変であるとし、第1の観測者と第2の観測者が相対的であるとする。反射した光は同じ距離を第1の観測者に向かってすすむが、その時、第2の観測者から見ると、反射光は両観測者出会ってから時間\(kT\)後の光を送っているので、第1の観測者が反射光を受け取るのは第1の観測者の時計で\( k(kT)=k^2T \)後になる。

これからは第1の観測者の時計で考える。 第2の観測者が光を反射した時刻は、第1の観測者が光を出射した時刻ともどってきた光を受けた時刻の真ん中の時刻なので、\( t_1=(k^2+1)T/2 \)である。また、往復距離は\( c(k^2-1)T \)であるので光が反射した位置は\( x_1=c(k^2-1)T/2 \)となる。第1の観測者に対する第2の観測者の速度は\(v\)であるから、上の考察より、 \[ v=x_1/t_1=c(k^2-1)/ (k^2+1) \]となる。これを\(k\)について解くと、 \[ k=\sqrt{\frac{1+v/c}{1-v/c}} \] となる。反射した時の時刻は第1の観測者, 第2の観測者で、それぞれ\(t_1=(1+k^2)T/2 \)、\( t_2=kT \)より, \[ \frac{t2}{t1}=\frac{2k}{1+k^2}=\sqrt{1-(v/c)^2} \] となり時間の遅れのが示される。

2016年7月14日木曜日

速度の上限値は光速 -でも、私は光と競争して勝てるかも?-

いよいよ相対論に入り始めた。光速は不変であるが、さらに、この速度はあらゆる(エネルギーを運ぶ)ものの最大速度である。これ成り立つためには、光速cを超える速度は観測されていない、観測できない、また、自然現象にきちんと当てはまることの3点からの確認が必要である。一番最後が、結構曲者で、光速不変性はうそだと直観的に思ってしまう人がいてもおかしくはない。なぜなら、光速不変性をみとめてしまうと、観測者によって時間の進み方が変わってしまうという結論にになってしまうからだ。

アインシュタインは重力を含まない運動の記述を特殊相対論と呼び、重力を含む運動の記述を一般相対論と呼んだ。[この説明は気に入りました。普通は時空が平坦とか曲がっているとかという話がされるのですが、初心者にはさっぱりなんのことやらわかりません。でもこれなら、わかった(ような気になる)]

これから、特殊相対論とはなにかという説明が始まります。直観的になかなかよくわからない不思議なことがいっぱい出てきます。

ちなみに光速がcになるのは真空中においてである。物質中の光の速度はcより小さい。例えば、なんと、太陽の中心では1秒間に1mmしか光は進まない(私はきっと光より速く走れるはずだ。)。また、物質中で光速よりも速い速度で荷電粒子(例えば電子)が走ると何が起きるか?(もちろん最大速度cより小さいので、こんなことが起こりえます)光がでます。これがチェレンコフ光です。

2016年7月12日火曜日

アインシュタインの講義ノートを紹介

Motion Mountainにはアインシュタイの節もありますが、このテキストの紹介は今回は一休み。

2014年、スイスに行きました。ベルンではアインシュタインの家に行ってきました。有名な噴水群のある通りに面した間口の狭い建物の中にあります。細い階段をのぼってゆくと、お年寄りの夫人がいて受付に座っていて、荷物を預かってもらい部屋に入ると、アインシュタインと奥さんの写真がかけられていました。

その後、ベルン歴史博物館併設のアインシュタイン博物館に行きました。入り口から入ったところの階段の周りはたくさんの鏡で構成され、像が何回も反射され、なんとも不思議な空間がつくられていました。そこに大きなアインシュタインの写真がでんと構えています。


この博物館には1910年、アインシュタインがベルン大学で教鞭をとっていたころの講義ノートが展示されていました。



上は解析力学で、実は、奥さんのMilevaの筆によるものです。さすが、数学者の奥さんでこういうふうにアインシュタインのアシストをしていたんですね。

下はアインシュタインの直筆で、剛体の力学でおなじみのオイラー方程式が書かれています。

この時の旅の写真は「サニーさんの旅メモ」の2014年イタリア・スイスに置いていますのでよかったらみてください。











2016年7月10日日曜日

光をボールにしてテニスはできるか?

「鏡をラケットにして、光をボールにしてテニスができるか」の節がある。

結果はともかくとして、この節では光速が速度の上限で、真空中では光速は一定であることを説明する。現在、光速は20桁の精度で周波数に依存しないことがわかっており、1m/sのオーダーの精度で測定できる。そのため、光速はきわめてよい速度標準になる。二重星の軌道、超新星のニュートリノバーストや家電製品の話題にも話がおよぶ。

2016年7月8日金曜日

光速の有限性は常識だった?

あのデカルトは光速は無限大を主張していたのだそうだ。えっ、と思ってしまう。

驚いたのは古代ギリシアのエンペドクロスは光速は有限であると考えていたらしい。

これらは、ある意味、哲学かもしれない。

昔から人は光速を測定しよう試みていた。とんでもない速度をどうやってたら測定できるのか?ガリレオも光速の測定に失敗したらしい。Motion Mountainには、これまでに行われた様々な光速測定の方法が紹介されている。

物理は自然現象と必ず関係している。つまり、測定というのは自然現象をとらえるという意味で物理の基本である。この本はそれが貫かれているような気がする。

2016年7月4日月曜日

Motion Mountainとの出会い

15年以上も前になりますが、相対論についてもっと知りたくて、Web上を探していたところ"Motion Mountain"と言うテキストブックを見つけました。すべて、英語だったので、そのままにしていたら、何年か後には、5巻に増え、内容も古典物理から、相対論、電磁気学、量子論と増え、いままで30万回もダウンロードされています。しかも、ダウンロードフリーです。内容的にすごくおもしろいので、少しづつ、紹介してゆきたいとおもっています。

このテキストブックはヨーロッパ発なのですが、日本にも関係しています。著者のChristoph Schillerさんは1990年ころ日本に滞在されていて、この膨大なテキストブックの執筆を始めた場所が横浜だとWebには書かれています。

「動かざること山の如し」と言った戦国武将がいましたが、"Motion Mountain"といっても山が動くわけではありません。テーマは”運動”です。登山をしながら、より高いところから”運動”を見るといままで見えていなかったものが見えるようになりどんどん視野が広がってゆきます。最後、"Motion Mountain"の山頂から見える運動の風景がどんなものであるかは最後まで読んでみないとわかりません。

最初は、一番最初に、興味を持った相対論からはじめます。